桜島・日の果て・幻化 梅崎春生(ISBN:4061960474)

最初に収録されている作品「風宴」から、タイトルとなっている3作品とも、通底する何かがあると感じる。何を感じて生きているのか?何を確かめたくて生きているのか。何を大切にして生きたいのか。それが色んな現実や幻とだんだんごちゃまぜになってきて訳がわからなくなってくる。しかしそんな中でも、確かな現実の描写がある。そういうことを曇りなく書ける。それが全体を通して読む上で、文章へ引き込まれる要因になっているように思う。例えばこんな…。

誰と限らず皆、判断の支柱を失っているのだ。現象に呼応する感覚があるだけで、皆その感覚を理性だと信じ込んでいる。

このような思想の明晰さが、文章全体を支えているのではないだろうか。